なつおと一緒! 第3回 
ライター宇田川<広島>和美
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 知的障害児・者に交付されるものに手帳があります。埼玉県の場合、「療育手帳(通称: 

緑の手帳)」と言います。障害をB(中度)、A(重度)、氈i最重度)とし、氓ヘ基本的に3才 

以上になって判定されます。手帳が交付されると、特別児童扶養手当や重度心身障害者 

医療費助成(以下「重度医療」と記す)などの申請ができます。 

 緑の手帳は一歳以上で交付されるので、夏生(なつお)が一歳になるころ、通院している 

小児医療センターのケースワーカーさんに相談に行きました。 

 未熟児の場合、小さいころは出産予定日から考えた修正月齢で発達を考えます。その 

頃、修正9ヵ月、喃語らしきものは一応出ていたものの、追視はしないし、首もすわらない、 

笑わない、経管栄養で全く飲み込めない、物をつかもうとしない、見ていてもかなり障害が 

重そうでした。だから、当然手続きを教えてくれるものと思っていました。 

 でも、ケースワーカーさんは、「未熟児で生まれていると発達は遅いから、1歳半ごろまで 

待ちましょう」と言いました。 

 修正で考えても、発達が遅れていることは確か。それでも交付はされないのか、とがっか 

りしました。手当だって6ヵ月分は遅れれば、ずいぶん違います。その間に入院してしまっ 

たら、乳児医療費支給(以下「乳児医療」)で、後から返ってくるとしても、一時的に払う入院 

費はどれくらいだろう。払えるだろうか、と心配しました。ちょうどその頃、乳児医療が一歳 

までだったのが三歳までになったので、医療費自体の心配はなくなり、まだよかったのです 

が、そうでなければ、手帳が出て重度医療がうけられるまで自己負担(もちろん社会保険 

があるので6万以上は申請すれば返ってくる)になります。 

 実際に入院したのは、手帳が出た後だったのですが、月20万弱を一時的に払い、そのう 

ちリネン代3万は全くの自己負担です。6万円は重度医療として、市に申請すると、5日まで 

ならその月に、それ以後は翌月に銀行に振り込まれますが、病院からの請求が月半ばな 

ので、翌月末にならないと振り込まれません。6万円以上は社会保険に高額医療費として 

申請できますが、銀行に振り込まれるのは数ヵ月後です。入院して長がったのは3ヵ月半く 

らいでしたが、振り込まれるのに時間がかかるので、各手当はもちろん、とにかくお金を貯 

めました。 

 なにしろ、私は卒業後1年1ヵ月しか働かなかったし、夫が大学を卒業する前に結婚し、 

教員となったその年に長男が生まれ、翌年に夏生が生まれているので、本当にお金がな 

かったのです!。 

 「一時払いなら、少し我慢すればよい」と思うかもしれませんが、何ヵ月入院するかわから 

ない状態であったこともあり、私にとっては恐怖でした。 

 でもその時は、未熟児だし、手帳が交付されなくても仕方がないとあきらめました。 

 その頃、気になっていたのが通園施設のことでした。通園施設については全く知らなかっ 

たのですが、以前「福祉の日」かなにかで配布されたパンフレットのようなものが実家にあ 

り、それまで成人の施設しかないと思っていた「市立わかゆり学園」に通園施設があるらし 

いとわかりました。手帳の相談をした後、ケースワーカーさんにわかゆり学園のことも聞い 

てみました。本で調べてくれましたが、ケースワーカーさんもあまり知らないようでした。「電 

話をして行ってみたらどうですか」と言うので、「見学だけでもしたい」と電話をしました。 

 見学させてくれると言うので、長男と夏生を連れていきました。話をするうち、入園させてく 

れることになり、「手帳も申請したほうがいいから」、と市のケースワーカーさんに連絡してく 

れました。 

 ケースワーカーさんが来てくれるまで、あまり日にちはかかりませんでした。市のケースワ 

ーカーさんは手続きを教えてくれ、市に提出する書類ももってきてくれました。 

 それが7月後半だったのですが、児童相談所の面接が9月で、最終的に手帳が出たの 

は10月でした。申請しても2〜3ヵ月はかかってしまうし、それから各手当等の書類を書 

き、手当はその書類を書いた月日によって支給され、さかのぼっては支給されないので、 

市のケースワーカーさんに連絡してもらえて本当によかったです。 

 手帳が出たのは、1歳3ヵ月でした。あのまま1歳半まで待っていたら、2回の入院は大騒 

ぎだったでしょうね。きっと補聴器を買うのもためらったでしょうし。 

 赤い手帳(身体障害者手帳)は、神経課の先生にお願いしました。すると小児医療センタ 

ーのケースワーカーさんから電話があり、日にちと手続きを教えてくれました。判定を予定 

していた日、夏生は入院していたので、キャンセルになるものだと思っていたのですが、病 

室で判定してくださり、書類ができるとケースワーカーさんが連絡してくれました。4歳近くに 

なっていたし、明らかに重度障害児だったので、何の問題もなかっでしょう。こんなことなら 

3才の入院しているときにお願いすればよかったと思いました。手帳が申請できる3才のと 

きは、私が妊娠して、妊娠悪阻や手術のため入院したりしていて、定期通院も必要最低限 

にしていたのです。そんなわけで、申請はしたかったのですが、それどころではなかったの 

です。 

 まあ、緑の手帳が重度氓ナ交付されていたので、だいたいの制度は利用でき、必要なの 

は補装具の交付くらいだったので、切羽詰まってはいなかったんですね。 

 市のケースワーカーさんはいろいろと心配してくださったのですが、小児医療センターの 

ケースワーカーさんは出張の日も多く、相談にいくたび、人が変わって違う人になってしまう 

など、あまり頼りにならないかなあ、という感じでした。